残業代の未払いをチェックする方法を徹底解説
残業代(割増賃金)は労働基準法第37条で定められた法律上の権利であり、使用者には適正な支払義務があります。しかし実態としては、残業代が正しく計算・支給されていないケースが少なくありません。本ツールを使って、あなたの残業代が適正に支払われているかを確認しましょう。
残業代の正しい計算方法
残業代の計算は3つのステップで行います。まず「1時間あたりの基礎賃金」を算出し、次に「割増率」を適用し、最後に「残業時間」を掛けて求めます。
1時間あたりの基礎賃金 = (基本給 + 対象手当) ÷ (月間所定労働日数 × 1日の所定労働時間)
ここで重要なのは、基礎賃金に含める手当と含めない手当があることです。基本給のほか、職務手当・役職手当・業務手当・地域手当などは基礎賃金に含めます。一方、住宅手当・家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・臨時に支払われた賃金・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)は除外されます(労働基準法第37条第5項、労働基準法施行規則第21条)。
割増率の種類と計算
労働基準法で定められた割増率は以下のとおりです。
- 通常の時間外労働:25%割増(基礎賃金の1.25倍)
- 深夜労働(22時〜翌5時):25%割増。時間外労働と重なる場合は合計50%割増(1.50倍)
- 休日労働(法定休日):35%割増(基礎賃金の1.35倍)
- 月60時間超の時間外労働:50%割増(基礎賃金の1.50倍)
深夜帯と月60時間超が重なる場合は75%割増(1.75倍)が適用されます。また、休日労働と深夜が重なる場合は60%割増(1.60倍)となります。
月60時間超の割増率引き上げ
2023年4月からは中小企業にも月60時間超の時間外労働に対する50%割増賃金が適用されています。これまで大企業のみに適用されていた制度が全企業に拡大されました。例えば月80時間残業した場合、60時間までは25%割増ですが、60時間を超える20時間分は50%割増で計算する必要があります。
基礎賃金に含める手当の判断
残業代計算で最も間違いが多いポイントの一つが、基礎賃金に含める手当の範囲です。法律上除外できる手当は限定列挙されており、それ以外の手当は原則として基礎賃金に含めなければなりません。名称にかかわらず実質で判断されるため、「調整手当」「特別手当」などの名目でも、毎月定額で支給される手当は基礎賃金に含まれる可能性が高いです。
なお、住宅手当・家族手当であっても、一律定額で支給される場合は除外対象にならず、基礎賃金に含める必要があるとされています(行政解釈)。
固定残業代制(みなし残業)の適法要件
固定残業代制度は、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度です。この制度が適法であるためには、以下の要件を全て満たす必要があります。
- 固定残業代の金額と対象時間数が雇用契約書・就業規則・労働条件通知書に明確に記載されていること
- 固定残業代が基本給と明確に区分されていること
- 固定残業時間を超えた実際の残業については、超過分の追加支払いがなされること
- 固定残業代を含めた基本給が最低賃金を下回らないこと
これらの要件を一つでも満たさない場合、固定残業代制そのものが無効とされ、固定残業代部分も基礎賃金に算入して残業代を再計算する必要が生じます。実際の裁判例でも、要件不備を理由に固定残業代制が無効と判断されたケースは数多くあります。
残業代請求の時効
残業代を含む賃金の請求権の時効は3年間です(2020年4月1日以降に支払日が到来する賃金に適用。労働基準法第115条、附則第143条第3項)。つまり、現時点から遡って過去3年分の未払い残業代を請求することが可能です。時効の起算点は各月の賃金支払日の翌日からです。
未払い残業代がある場合は、まずタイムカード・勤怠記録・パソコンのログ・メールの送受信履歴・業務日報などの証拠を確保しましょう。その上で、会社への請求、労働基準監督署への相談、弁護士への依頼といった段階的な対応を検討します。悪質な未払いの場合は、付加金(未払い額と同額)の支払いが裁判所によって命じられることもあります(労働基準法第114条)。